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その日あった一日の大報告会(嘘) 見てくれるだけでもありがたき幸せ!!
* admin *
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携帯しか閲覧できないようにしている、
自分のキャラのパロディ話しを載せようかと思います
まだそんなにはキャラは出てきてはいませんが、
第二章はボチボチ出しています
ちょいグロイとまではいかなくとも、
流血的な表現は多少ありますので
もの凄く気になる!とか、
かなり苦手!!とか、
少しでもあると気持ち悪くなる!と言う方は
お控えしてくださるとよろしいかと思います
あんま気にしなーい!とか、
こんなんでソレを言う?とか
な方には大丈夫だとは思います

書いてては今のところ楽しいので、
この熱が冷めるまでは書き通しになるとは思います

それでは、
第一章です!




+ + + + + + + + + +

++++++++++++++++++++++++++++++++++




霧雨のように降り続く
音もない雨の中

その無音を切り裂くのは
炎の音

燃え盛る火の前に
小さな子供が立ち尽くしていた




いつまでも


・・・・いつまでも






■■■


「七緒様、今日は何時にお戻りに?」
「あー・・・うん、火曜だから4時には門の所に出れる」
「かしこまりました、いってらっしゃいませ」

運転手の言葉に手を振って車を下りた


夏に近づき始めた朝日が出迎える
光に慣れていなかった目を眇させて、
勢いよく校舎へ駆け出す

「おはよー!」
「はよっ七緒!」
「おはよーございまーす!」

かかる声に俺も返していく

「みんなっはよーー!!」

それはいつもと変わらない朝の風景


それが、
このあと崩れさるなんて・・・・



駆け込んだ校舎は涼しくて
ふぅっと一息つく
上履きに履きかえていると見知った顔が集まってくる
その鉢合わせたクラスメートとともに教室へ向かいながら

「なぁ知ってる?」
「何が?」

連れだった三人の中の一人がそう切り出した

「昨日、学校の裏で不審人物がいたんだってさ」
「はぁ?」
「何ソレ?」

思わず出る言葉に眉をしかめる
小学生じゃないんだから不審人物一人ぐらいで、
話題にするなと言いたげだ、
俺もその中の一人で話題を上げた奴の顔を見ると、

「いや、俺もさーそうは思ったんだけど」

困ったように肩を竦めさせてから

「その不審人物に声をかけたわけよ警備員のおっちゃんは、」
「うん、で?」
「したら・・・・刺されて入院」

えっ・・・・と息を呑んだ
それは、
高校生だろうが大人だろうが関係なく話題に上がることだった

「それ、で?」
「不審者は逃走、捕まってないってさ」
「うわー・・・・」

教室へついてもその話しで、
あちこちでもその話題で持ち切りだ
その内容はさすが話題に上がるだけあって多種多様
色々な尾ひれ背びれがついて話し込まれている

「怖なーなぁ?」
「だな、」

席につきながら先ほどの話の続きをした、
前に座ったのは話題を持ち掛けた奴で

「何か狙ってんのかね?」
「金目のモンとか?」
「それよか、物より人のか手っ取り早くね?」
「あー・・・ね、」

確かにそうだろう、
ここは国内でも有数な金持ち学校なのだから、
言い方を変えれば物を取るくらいなら人を盗んで要求した方が額も比較にならない
それだけここに通っているご子息ご息女様の家は一般水準はるかに越える金持ちの集まりだ

「狙うならやっぱ七緒か?」
「は、ナニソレ?」
「だってこの学校で1番じゃね?」

そうぬかすクラスメートにうろんな眼差しを向ける

「俺よりも上はいるだろ、」

そんな事を言っている目の前の奴の家だって世界の航空会社だ

「いやー広瀬の名前は強いと思うけどなー」
「はいはい、どーも」

おざなりに返すと目の前の奴は心配してるんだそ!と言う
その気持ちは有り難いが心配されるような自分ではない、
確かに【広瀬】の名前は国内だけには納まらず世界にも馳せてはいる
しかしそれは俺の力でも何でもなくって親の力だ
ましてや俺は、

「跡取りじゃないし」
「・・・あ、そっかー」

そう跡を継ぐのは歳の離れた姉だ

「いやいや、だからと言って気を抜くと痛い目見るかもだぞ!」
「・・・・はいはい、」
「こらっー俺の心配をおざなりにするな!」
「あははっ!分かったてば!」

ふざけ合っていると担任が教室には行ってきて、
出席の後に話題の事についての注意事項がいくつか述べられた
それら連絡事項がすべて終わると担任は教室を出て行き替わりに次の授業の教科担当が入れ代わりで入ってくる

「んげっ漢文かよー」

前の小さな呟きに同じ思いで小さく息をついた
その日の授業も滞りなく進みあと十数分で憩いの昼ご飯だ
何人かがソワソワし始める辺り身体が大きくなっても子供と言えよう
そんな自分も腹の虫がくるくる鳴き出している

「・・・・腹減った、」

机に懐いた所で、
ガラリと教室のドアが開かれた
いっせいにその方向にクラス全員が視線を向けた
顔を出したのは担任
何事だ?とざわめき出す

「授業中スイマセン、広瀬をお借りしても宜しいですか?」

自分の名前が出て、
前の席の奴と目線を交わしながら首を傾げていたら名前を呼ばれる
それに返事を返して担任に近づくと

「広瀬、お姉さんが迎えに来てる鞄を持って来い」
「姉貴が?」

何でまた?と二度目の傾げさせて言われた通りに席に戻って鞄を手にする

「あれ、帰んの?」
「ん、何か迎えが来てるみたいでさ」
「ふーん、じゃー明日な!」
「おう、」

友人に見送られて廊下に出ると、
黒づくめの見知った顔が何人かいた・・・・それは、自分の警護によくつく男達

「・・・・あれ?」

それらをぐるりと見渡す
一人が近づいて来て

「ご説明は睦月様が致します、こちらへ」

庇われるように背を押され有無は言わさず歩くことを急くされる
仕方なく頷いて何も言わずに言われた通りに動いた
歩き出した方向には職員室やら校長室などがある本校舎
左側は教室が並ぶ壁
右側は一面の窓
その壁側に寄せられ自分を囲むように数人の男が並んで歩く
いつにない物々しい雰囲気に眉間のシワがよる
こんな事は今までにない警護体制だった

『何か・・・・あるのか?』

ちらりと男を見上げる
険しい表情を浮かべて辺りを気にしていた
姉がわざわざ来て説明すると言うのだから簡単で軽い話しではないのだろう
だって昨日までは確かアメリカにいたのだから

そんな事をつらつら考えていた時だった
かしゃーんと後ろで何かが割れる音がした
振り返ると・・・・そこには何もなく、
割れた何かすらない
とたんに護衛の警戒が強まる

「七緒様、」
「わかってる・・・」

この場から離れるために足早に進もうとした
その時、

「行動が遅いですよ、」

前方から笑いを含んだ男の声
手には黒光りする人を無差別に殺せる道具
それを掲げながら言った



「では、ごきげんよう」



男が笑う
そして始まる空気を切り裂く打撃音
空になった弾峽がカラカラ落ちる
ガラスが割れる
壁が弾ける
紙が舞飛ぶ

そして
赤が弾け飛ぶ


男はまだ笑っていた



事務所と言うに物が少なく表すならばラウンジのような部屋に、
ちらほらと人が散らばってソファーに身を沈めていた
その静かな部屋に、

「お仕事はいりましたー!!」

と声を上げながら入ってくる命知らず
無言で色々な方から物が飛んで来てその人物を部屋から弾け飛ばして追い出した
バタンとドアが閉まる
ひらりと紙が舞い、
床に落ちる前に白い指先がそれを捕まえる
書面に書かれた内容を簡潔に言葉にした

「・・・・お守りの仕事やりたい人ー」

やる気なさげにその仕事内容を口にする
その言葉に至る所から

「俺、もーお手付き、なのでやりたくありません」
「・・・・俺は謹慎中、メンドイのでパス」
「さっき受けたばっか、できたとしてもお断りー」
「他当たってくらさい!」

そんな言葉だった、
誰もやりたがるのはここにはいないようだ
紙を持った人物もしかり

「誰も出来ないじゃん」

小さく息をついてからこう結論つけた

『見なかった事にしよう』

そう心の中でつぶやいて紙を丸めてごみ箱に捨てようとした時、

「ふぁぁぁっ・・・っふうぅぅ」

大きな欠伸が部屋の真ん中から聞こえた
ちらりと目を向けると腕が天井に突き刺すが如く伸ばされている
ぷるぷる震えながらあったその腕が下におろされると今度は頭が見えた

「・・・・あっかねちゃーん」
「ん?」
「写真ある?」
「ある」

首を左右に傾げながら腕を回す動作をしながら紙を投げる体制のままの人物に声をかけた
あかねと呼ばれた人物は腕を下ろしてぐしゃぐしゃの紙を広げ
印刷されている写真に写るその顔を見る

「可愛い?」
「・・・・」

何を言うのかと思ったら・・・・そんな関係なさそうの言葉、
しかしいつもと変わらない質問に

「きっと・・・和泉のタイプ」
「おっしゃー!!んならば俺が引き受けて差し上げましょう!!」

言い終わる語尾に重なるように上げる声
ソファーの背もたれからばっと振り返って顔を見せた

「・・・・大丈夫?」
「のーなぷろぐれむですよ!もうまんたい!」

力こぶを作るこの人物、
裏の世界で名を知らぬ者がいないほどの有名人だ

名を和泉、
【鬼神】の異名を持つ

その満面の笑みを見て思わずため息をついてしまったのがこの和泉の部下、

名を丹子、

そのビスクドールのような顔に不似合いなシワを刻み、
ぐしゃぐしゃの紙を手渡した


朝から憂鬱さが抜けない
むしろここずっとこの憂鬱が付き纏っている
机に肘をつきながら溜息をついた

「七緒ー?元気ねーなー」
「んー」

いつもと同じ前の席にいる友人、井国が俺の顔を覗き込んできた
あの事件の後でも変わらず俺の側にいてくれている

「元気出せよ・・・せっかく学校に来れたんだぜ?」
「・・・・周りは来てほしくなさそうな顔してるけどな」

ちらりと辺りを見渡せば俺に視線を送り気配を伺っているのが分かる
井国もそれに気付いて牽制するかのように辺りに睨みを効かせた

「気にすんな、ってのは無理だなー」
「んー」

気にしないなんて、
簡単にできない・・・・
忘れる事だって難しい、



あの日
あの時に生き残ったのは狙われた俺だけ
無数に放たれた銃弾は、
壁や床や窓だけではなくそれは人をも貫いた
あそこにいた俺以外の人間は統べて死んだ
長年俺を守ってくれた彼等も
担任だった先生も
体中に穴を開け血を噴き出し
廊下に夥しい量の血を溢れさせ
俺の周りに倒れていた
今までの騒音が嘘のような無音の中
銃を乱射した男は笑う



『おや・・・・弾切れみたいです』



言葉は残念そうなのに
声はそれに反して別の意味を持っていた
それが当たり前かのように


『まーこんな野蛮なモノは僕は嫌いですし、こんなモノを使わなくとも人は簡単に死ねますから』



笑いながら
楽しそうに
言葉を残して



『それに人は己の手で刻み殺してこそ、意味があるのですから』



その存在意味を無くした銃を俺が呆然としている目の前に放り投げる



『また近いうちにどこかでお会いしましょう』



男は俺に視線を向けたままゆったりと足を進め、
窓枠に足をかけた



『その時までその命を大事にしていて下さいね?』



優雅に言葉と礼を残して男は三階の校舎の窓から躊躇わずに飛び出した

「・・・・」

その姿を見送った体制のままに、
音に気付いて駆け付けた姉や教師があらわれるまで
俺は血まみれのままに座り込んでいた


何も言えず
何も出来ず


顔面が蒼白の姉に助け起こされ
先ほどの警護が比ではない人間に囲まれて学校から連れ出されたのだ

「来ない方が良かったかな、」
「俺、そんなこと思ってねーからな」
「・・・・うん」

それが今から二週間前
やっと昨日になって復学を許されて学校に来たのだが・・・・
来ない方が良かったのではないかと思うほどに周りの雰囲気が変わっていた

恐れを含んだ視線で俺を見詰める無数の瞳
憐れみの言葉をはきながらも一定の距離を保つ教師達
唯一側にいてくれるのは席が目の前の井国だけだった
明らかに俺の存在を持て余すかのような雰囲気に、
憂鬱さが治まらないのだ
無理を言って学校に来たけれど、
姉貴の言う通りにしておけば良かったのかもしれない
だって・・・・今の俺は、




「・・・・何、それ・・・・?」

病院の個室でベットの背にもたれながら隣に立つ姉の顔を見上げる

「どう言う意味?」
「・・・・分からないの、ただ昨日の夜にアタシ宛に直接届いたメールにそう書いてあったの」
「・・・・俺を・・・・殺す、って?」

聞かされた内容は想像をはるかに越えるものだった

「・・・・そんな、」

それは姉貴宛に届いた、
俺への殺人予告
日付、
時間、
どう殺すか詳しい方法が書かれた内容らしかった
それは正しく先程の忘れたくてもできない
あの時

「でも・・・・俺、まだ生きてる・・・・よ?」
「当たり前よ!あなたを死なせてたまるものですか!!」

悲痛な声で叫ぶ
そう俺は生きている、
こうやって姉貴の前にいる
・・・・俺以外の人は死んでしまったけれど
あの人達は死ぬべきじゃなかった
俺だってこんな殺人予告をされるような酷いことをした覚えはない
しがない高校生に何が出来ようか?
考えられるとすれば、

「・・・・何か会社であった?」

それしか思い当たらない、
そしてそれは的中しているのだろう
姉貴の顔が歪む

「・・・・たとえ、何があろうと貴方に傷一つ負わせない」
「・・・・」

ゆっくりと俺の頬を撫でる

「どんなことになろうと、絶対に」

まるで自分があの銃弾を全身に浴びたかのように痛みを耐える表情
始めて見せるそんな顔に理由を話さなかった姉貴に、
問い質す事が出来なかった




「オイッ・・・オイ、大丈夫か?」
「・・・・あ、え?」

目の前で振られた手に肩を揺らして我に返る

「いや、思い詰めた顔して黙るから何かあるのかと思って」

心配げに聞いてくる井国に曖昧に笑って首を振る

「何もないよ・・・・って言うか何も俺知らないからさ」
「知らない?」
「会社絡みだとは思うけど、教えては貰えなかったから」

聞くに聞けないまま今に至り、
そして俺の耳に入らないようになっているのだ

「ただ分かるのは俺に殺人予告が来てることだけ」
「・・・・は?」

井国も予想外の言葉だったらしく間抜けな顔で聞き返してきた
その表情に思わず笑ってしまう

「あはは、変な顔」
「馬鹿っちゃかすな!」
「うん、ゴメン」
「いや、うん、あー・・・・笑うのは良い、いや俺を笑うのは良くないけどっ」

困ったような井国にもう一度笑みを見せて

「・・・・俺が聞きたいくら、」

言葉の途中で背後に衝撃を感じた、
今の事があるから大袈裟に身体をビクつかせて振り返ると、
一人の男子生徒が俺を見下ろし立っていた
逆光と眼鏡と前髪で見えない顔、
と言うより口が小さく動いた

「あ、ゴメン」
「いや、うん良いよ」

見下ろされながら言われた言葉に首を振ると、
そいつは前の廊下側の席についた

「・・・・なぁ」
「ん?」
「あんな奴ウチのクラスにいたっけか?」
「は、ダレ?」

笑う笑わない、笑って欲しいけど笑われたくない等と小さくブツブツ何やら自分の世界に浸っていた井国の制服を引っ張って前の方を指差す

「あれ、」
「どれ?」
「だから入口の席に座ってるアイツだよ」
「入口の奴?」

違う方に視線を向けている顔を無理矢理捻って向かせる

「・・・あ、ありゃー岸田じゃんか」
「きし、だ?」
「うん、出席番号4番の海岸の岸に田んぼの田の岸田くん、ですよ」

事細かに説明してくれるがあの顔には覚えがなかった

「って、何よクラスメートの顔も覚えてねーの?それはちょいと酷くないか?」

向けていた視線を戻しながら呆れ顔の井国に俺の方が眉間にしわがよる

「クラスメート?」
「そーだろうが」
「・・・・」

そう、だっけか?
このクラスになって半年以上が経つ
確かに今だ一言二言しか話した事がない奴もいるけれど、
けれど見たことがないと思うのはいなかったと思う

「まーーうん、」
「・・・・何だよ」

眉間によったしわが一段と深めさせていたら、

「アイツちょい根暗とか言われてるし仲が良い奴とか友達いないみたいだから、そう思うのかも」
「・・・・あぁ、印象がなんか薄いから?」
「溶け込み過ぎて逆に気がつかない感じ?」

そう言われてしまえばそうかもしれない
その他大勢の印象
ましてや話した事もなければ共通の友人がいなかったら知り合える機会なんてないかもしれない
振り返る事のない背中を見つめながら

「気にする程でもないのかな、」
「まー俺の他にお前を怖がらない相手とも言えようかね、」
「だからと言ってお近づきにもなってくれなさそうだな」
「確かに」

井国みたいに態度を変える事なく付き合ってくれるのとは別な意味で、
今までと同じ態度は変わらず一クラスメート、
何の接点もないクラスメートととしているのだろうとその背中が物語っている

「ま、このクラスじゃ貴重な存在ではあるけどね」

けれど周りと同じ、
ちらちら存在を伺うような視線を向けてくるわけでもないのは、
今の俺には正直それは助かる存在ではある

「・・・・そうだな、」

しかしこの後、
それが覆される事と分かるのは・・・・

数時間とかからない未来だった




浴びせられる視線の嵐の中で今日の授業もあと1時間で終わるという時、
廊下から自分の名前を呼ぶ声に振り返る

「えーっと・・・・広瀬、いる?」

嫌そうな顔で教室の中を覗き込んで、
視線をうろうろさせるそれが俺を捕らえるとビクリと身体を震わせ、
俺を見つけ視線が合うと慌てて外した

「ちょっと・・・いいか、っ」

その反応に俺よりも文句を言いたそうな井国の肩を叩いて立ち上がる

「何?」
「先生が、連れてこいっていうんだ」

不本意らしいその教師からの物伝えにその男子生徒は吐き捨てるかのように言う
気配で井国の機嫌が一段と下がるのが分かった
人間って自分以外の誰かが熱くなると冷静になれるのは本当らしい

「分かった、今行くよ」
「・・・・早くしろよ」

あんまりな言い草、
それだけ残して頭を引っ込める

「・・・・俺も付いていこうか?」
「イヤ、良いよ大丈夫」
「そうか?何かあったら携帯にいれろよ」

それに頷いて廊下の方へと出た
数メートル先の方にさっきの生徒が立っていて俺の姿を確認するとついて来いと言っている割にはさっさと歩き出して置いて行ってしまう
慌ててそれに追い付くために駆け出した
後ろを振り返ると井国が心配そうな顔で俺に手を振って見送ってくれていた
それに手を振り返していたらその井国の後ろ、
反対側のドアから岸田が外に出て別の方へと歩いているのが見えた
すたすたと先を歩いて行ってしまう彼の後を小走りに追う
俺が付いて行かなかったらどうするつもりなかと思う
このまま黙って立ち止まっていても気付かなそうだ

「・・・・」

等とその気もないが大人しく付いていくのも釈だし、
黙って歩くのも手持ち無沙汰なので下らないことを考えてみる
楽しくはないけれど

数分もしないうちに辺りは静かになって、
教科準備室や資料室だけのある校舎へと来ていていた
そう言えばと一つ思い当たる
今だ歩き続けるそいつの背に言葉を投げかけた

「なぁ・・・・聞くの忘れてたけど誰先生が呼んでんの?」

シカトを決め込むのかと思ったら案外あっさり返事が返ってくる

「黙ってついて来いよ」

あっさりし過ぎてるけど、
黙ってましたけどねさっきまでは、
心の中で軽く舌を出したら、
目の前の奴がぴたりと歩くのを止めた

「?」

何だろう?と思いながら一定の距離で離れたその場所に同じく立ち止まった

「・・・・ここ、とか?」

ちらりと横に視線をずらせばそこには『数学第一準備室』の文字
ほっきり言って違うと言ってほしい
この教科の先生は好きじゃないしあっちも俺を好きじゃないと思う
だって一々難しい問題だけを俺に指名してくるからだ
あれか、
答えちゃうのが悪いのか?
仕方ないじゃないか数学は好きなんだから・・・・と溜息ついたら

「そうかもね、」

ぽつりと小さな声
聞き逃して顔を上げる

「え、何?」
「・・・・別にここでもいいかって話し」
「・・・・?」

今までの口調と雰囲気をがらりと変えて、
そいつは漸く振り返った

「アンタだって、ドコだろうと構わねーだろ?」
「な、にが?」

ケタケタ笑い声を上げ
ゆっくり俺に近づいてくる
本能が危険を察知して身体が勝手に後ろへと後退した
そんな俺に気付いて笑い声が大きくなる

「ん、どーしたんだよ広瀬、顔が青くなってんぞ?」
「おま、え・・・・何?」
「えー俺?」

ケタケタ笑いから今度は声もなく表情で笑い
また一段と俺との距離を縮めてくる

「何だよ、俺のこと忘れちゃってんの?合同体育とかで一緒にバスケとかしたじゃん」
「・・・覚えてな、い」
「隣の坂田だよ、ホントに覚えてない?」

ヒデーと笑いながら、
一瞬にして目の前に間合い詰めて来た

「!?」
「ま、今から消える命には関係ないか」

そう言って首に手がかかる
締め付ける前の軽く力がかかった状態

「ゴメンなー俺もホントはこんな事したくはないんだけど、仕事だからさー」
「う゛っ・・・・くっ」
「もと友達のよしみで一思いにはやってやるからさ」

ぐぐぐっと締め付ける指に力が加わる
途端に肺へと送られるはずの空気が止まり苦しくなってくる

「悪く思うなよ広瀬、恨むならお前のお、」

心にもないことをつらつら述べていた言葉が止まり、
覚えがある衝撃が身体を襲った

どっ

「っ」
「!?」

その拍子に指が首から離れて勢いよく空気が肺と言わず脳と言わず激流のようになだれ込んで来た

「っが・・・・げほっげほっ!!」

空気にむせってしゃがみ込みながら上を見上げた
首を締めていた男の背後に誰かがいる

「あ、ゴメン」
「・・・・何だよ、」

聞き覚えのある言葉に声
それは先ほど自分とは違う方面に行っていた岸田で、


どうして?とか
ここにいちゃ危ない、とか


言いたいけれどそれ所じゃない自分は二人のやり取りを見るだけしか出来ないかった

「・・・・こんな所でイジメとか良くないと思う」

抑揚のない声が聞こえて来る
空気が読めてるようで微妙にズレた言葉に首を締めていた奴は、
一瞬怯んだものすぐに自分より弱いと認識したのか

「は、何お前カンケーねーだろどっか行けよ」
「じゃー広瀬も連れて行くから」

ぐいっと身体を押しのけて見えたのはやっぱり岸田だった
でもさっきと同じで逆光と眼鏡と前髪に隠れて表情は見えない

「何言っちゃってんの?今俺たち遊んでるだけだから、お前だけ帰れよ」
「そーは見えなかったけど?」
「思い違いじゃねーの?」

押し退けられた身体をまた俺の前に戻して、
岸田の身体を力任せに押した

「つかさー俺としてもウダウダこんな事してる暇ねーわけよ」
「・・・・」
「だからさ、」

そう言ってそいつは背中に片腕を回し、
いつの間にかそこには刃渡り20センチ以上のサバイバルナイフが握られていた

「っ」

何でそんな物が!?驚いて手に握られたそれを凝視する

「つーかさーあんまりごちゃごちゃ言ってるとアンタが言うようにイジメちゃうよ?」
「・・・・」
「痛いのヤダろ?」

岸田は黙ってコイツの言ってる事を聞いていた

危ない!
逃げろ!

そんな短く簡単な言葉すら今の俺には無理で、
太陽にきらめいた刃が横に流れる


きっと
また
あの時みたいに、

鮮血が空を舞うのだろう


「死んじゃえ」

男が暗く異常な声音で言葉を口にした

「お前がな」

きらめいた刃が振り下ろされる直前で止まり男の体がびくりと揺れる

「・・・ふーん、ラン・ディペール社製の『NN30』ね、下っ端でも良いの持ってるじゃん」

いつの間にかそのナイフは岸田の手に渡っている

「テッメ・・・・!!」

何が起こったのか反応が遅れた男の首元に刃が触れていた

「でも機能は三段階変化のみか、微妙だね」
「なっ・・・んだとっ」

刀のような形をした刃がノイズが入ったようにブレだかと思うと先ほどと同じナイフに変わった

「・・・・え?」

目の錯覚でもおきたのかと思い凝らしてその物体を見つめた

「なん、で・・・・それ」
「変化速度はそこさこ、だけどブレが大きい」

それは目の錯覚ではなく岸田の手の中で小刀からナイフへ、
ナイフから黒光りする拳銃へと変わった

「やっ止めろ!!」

男が慌てて岸田の手からそれを奪おうとするが、
くるりと回転する動きのように簡単に両手を後ろに押さえ込まれ廊下に倒された

「っくぅ!!」
「メンテナンスしてる?」
「るっせー!」
「しないと壊れるよ、二級品は」
「っ!!」

カッと押さえ込まれ男の顔に赤が走り、
一気に怒りに染めた

「ぅお゛ぉぉぉぉっ!!」

声を上げて背中にいた岸田を起き上がる要領で押し飛ばす
また動きを封じられるのかと思えば簡単にそこから退いた

「返しやがれ!!」
「うん、はい」

あっさりそれを放る
男はそれを手にして俺よりも岸田に目的を変更して切り掛かった

「死ねぇ!!」
「威勢は声だけ、なってないなー」
「っ・・・・・がはっ」

腹に肘が入り前のめりに倒れ膝を着き胃液を吐き散らす
その頭に足を置いて勢いよく廊下に叩き付け

「誰に基礎教わったの知らないけど、俺を相手にする時は頭クラス百人は連れてこい」

髪を引っ掴んで起こし、
軽々と岸田よりも大きな身体を持ち上げた

「じゃーまたね、バイバイ」

漸くあらわになった顔
見えたそこには行動と言動のちぐはぐな綺麗な笑み
顔面を血でドロドロにした男が言葉にする前に、

ぽーん

と窓から投げ落とした

「っ!?」

俺も窓の外に出された男も目を見開く
落ちていく速度は変わらないはずなのに、
何故か物凄くゆっくりと男が視界から消えた

窓から消えたソレ
ここは五階の校舎
落ちる沈黙
何かが叩きつけられる音が・・・・待っていたけれどなかった
小さな舌打ちが聞こえて
恐る恐るその音の方へ視線を向けたら、
くるりと岸田が身を翻してにっこり笑みを見せた
そして、
この一言


「ふー重かったー」


良い汗流せました!!的に額を拭う
爽やか度アップ
しかし額に汗はない


・・・・え?
これは、誰?


呆然と岸田と思っていた人物を見上げた

「僕は岸田くんです」
「っ」

俺の心の声を聞き取ったかのような返しに驚いていると
岸田は俺の前に立って腰に手を宛てて、
ぷりぷり怒り始めた

「君ねー可愛いからって何しても許されるわけじゃないんだよ?」
「・・・・は、え?」

な、何!?

俺の驚きもなんのその、
次にはどこぞの乙女か!?みたいにしなを作って満面の笑み

「でもっ許しちゃう!!」
「はっ!?」

驚いた顔も可愛いぞっ
とか何とか意味不明なことを言いながら人の頬をぷにぷに突いてきた
今日その存在に気付いたに近い岸田の第一印象と予備知識は、

大人しい奴
フツーな感じ
根暗じゃないけれどそれに近い感じ
眼鏡・・・・etc

つらつら岸田を見上げながら印象を上げていたら、
笑った
それはもー綺麗に深く

「まさしく僕の狙い通りに君は感じてくれたわけだ」
「・・・・?」

何を言ってるんだ?
この人は一体・・・・

「君の疑問に答えてあげたいのはやまやまなんだけどね、」

また俺の心を読んでその通りに答えようとしてくれる
けれど、

「ちょっと時間がなくなっちゃた・・・・」

腕の時計に目をやり、
確認した時間が彼の思った時間よりも大幅に過ぎてるようだ
溜息を一つ落とした

「広瀬くん、先生に岸田は早退しましたって伝えてくれる?」
「え?」
「僕は帰るから、お願いね?」

先ほどの圧倒的な存在感を何事もなかったかのように消し去る

いつもの岸田の口調で、
いつもの岸田の表情で、

そう言った

「バイバイ、また明日」

小さく手を振って
小さく控えめに笑って
またどこかへ歩いて行ってしまう

「・・・何、だったんだ?」

さっきの出来事と、
今の出来事、
理解するには総てがちぐはぐで、
どこから理解すれば良いのかすら分からない

ただ分かった一つの事は、
岸田が印象とは掛け離れている事と、
俺を助けてくれたことだけ

「教室、戻んないとな・・・・」

伝言もあるし、
きっと井国も心配してるしね、

「よいしょ、」

ずっと座り込んだ廊下から立ち上がってズボンについたゴミを掃う
階段を降りれば今までの静けさが嘘のように慌ただしくなる






□□□



無機質な白いドアを開けたらそこは

「戦場と言う名の異空間でしたー、とか?」

とか笑えない
何このボロボロ具合?

「・・・・何事?」

部屋に入らずドアの前に立ってそう呟けば、
事情を知ってそうなのがこちらに近寄って来た

「あ、おかえり」
「ただいま・・・・じゃなくて、何事!?」

部屋の中を指差す
自分のお気に入りの真っ赤なソファーが切り裂かれて中身が飛び出しているし、
もう少し経てば夏の花が彩りよく咲くはずだった朝顔は葉っぱすらないし、

「あー・・・・」
「あーじゃないよ!説明してー何事さ!?」

手にした報告書らしき白い紙束を口元に宛てて泳ぐ視線

「何て言うのかな、いつもの事と言えばいつものアイツ、ら」

最後まで言わさずに中へと走り出した

「ターカートー!ウレイっっ!!」

怒鳴り声を上げて今だに睨み合っている二人に飛び掛かった、

「っげ!」
「やっべ!!」

と言うか飛び蹴りくらわした
飛んできた人物に漸く気付いたときには、
目の前に靴底で避けるだなんて皆無

どごしゃっ
めきゃっ

きっちりど真ん中に減り込ませ、そして部屋のはじに吹っ飛ばした
壁に激突して止まる

「何さらしとんのじゃホゲナスがー!!」

綺麗に着地
第一声がそれ
どんなに窘めても止まらなかった小競り合いが止む

「・・・おみごと」

思わず感嘆の言葉を漏らして小さく拍手

「なんちゅー事をしやがるんだっ馬鹿!!」

蹴りをかました男達を腰に手を宛てて怒鳴る、
がしかし・・・・相手は痙攣するばかりで反応がない

「朝顔さんがっ・・・俺の朝顔さんが・・・謝れ!朝顔さんに三つ指ついて三々九度しやがれ!」
「え、それ違くない?」

それは神前の前で御神酒を飲む儀式でしょ?
突っ込み要員である丹子がドアに手をかけたままに振り返る

「種から蒔いて漸くここまで育ったのに・・・・死んで朝子さんに詫びろ」

朝顔さんは朝子さんという名前があるらしい、
しかし植物に負ける彼等の存在もどうだろうか

「ま、消えようが消えまいが俺には関係ないけどね、報告書出しに行ってくる」
「いってらっしゃい丹子ちゃん!」

今まで怒りの形相を吹き飛ばして笑顔で見送られた
あの早変わりはまったくもって尊敬の域だ

「ちなみにお前らはこの部屋の修繕を明日までに終えること、むしろ今日の日付が変わるまでに終えろ、そうしてから死ね」

ちなみに現在の時刻は午後8時
ドスの効いた声で転がる二体の屍にそう言い残し、
くるりと踵を返し部屋を後にした


背後で返事を返すかのように二本の親指が立つのだった





++++++++++++++++++++++++++++++++++

長いので、
続きは後日と言うことで!
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